僕らはどこにも開かない/御影瑛路

僕らはどこにも開かない (電撃文庫)

僕らはどこにも開かない (電撃文庫)

 問題作。そう銘打たれていたが、読んでみると普通に面白い。敢えて言うならば、今までの電撃の雰囲気とはちょっと違った感じはした。なんとなくメフィスト系の流れとか、そういう風な感じ。というか最近のライトノベルの流れか。
 暴力的な殺人衝動。やっぱそれが問題作といわれる所以か。今までの電撃ではあまりなかったからかもしれない。「殺したい」連呼シーンは、され竜2巻の死ね死ね連呼シーンや、舞城の作品を髣髴とさせる。あんまし中高生とかにはいい影響を与えないかもしれない。
 
 それでも、この作品はやっぱり電撃だなって思ったのは、その結末。恋の魔法だなんてベタベタにもほどがあると思うが、それでも最後には、幸せが続けばいい、そう思ったのだろう。
 救われない物語と、ハッピーエンドな物語。違うのは結果だけ。現実はそんなに甘いものでないし、ご都合主義なんてものはない。しかし、望むことをやめたら本当の意味で救われなくなってしまう。希望があるから絶望が引き立つ。ならば希望を持たなければ絶望しないかといえば、それ自体が絶望に近しいものだと思う。
 雅人は、救われたいわけではなかったろうが、結果は希望も絶望もなく、それは救われたわけではないだろう。ハッピーエンドとも言えるし、虚無感も残る。そんな終わり方が、かなりよかった作品。