平成トム・ソーヤー/原田宗典

平成トム・ソーヤー (集英社文庫)

平成トム・ソーヤー (集英社文庫)

戦線スパイクヒルズの原作ということで読んでみたけれど、最高。めっちゃ面白い。漫画版を読んでいたけど楽しめたし、おそらくその逆でも楽しめるんじゃないかと思う。
内容は、もうどうしようもないくらいストレートな青春小説で、読んでいてすごいワクワクしてくるし、青春ってこんなに楽しいものなんだなぁって、羨ましくも思う。それでも、ただ青いだけの作品ではなくて、現実がちゃんとあって、それと戦っての青春というところにまた憧れを感じたりする。特に主人公ノムラの家庭状況という現実は、スウガクやキクチの家庭状況の特殊さに比べてなんだか、とてもリアルな感じがする。リアルで強大で、最も厄介な現実。そんな現実を如何に切り抜けるかっていう、ノムラの板挟みな心理が、これまたリアルに伝わってくる。
それから、「スリ」という要素がある以上、何箇所かの見せ場では物凄い緊張感や興奮が味わえる。その緊張感を見事に表現した筆力ってすごいよなぁ、と読み終えてからそんなことを思った。
後味もすっきりしていて、特に不満はないかな。うん、面白かった。
漫画版の方はまだ続いているようなので、そちらの続きも楽しみ。