グラスホッパー/伊坂幸太郎

グラスホッパー

グラスホッパー

殺し屋、自殺屋、そして違法会社の社員。それぞれの物語は序盤でこそ独立しているように見えるけれど、途中からは視点が変わるだけで完全にひとつの物語になってしまう。そういう部分がラッシュライフとは異なり、より楽しめた。
登場人物の職業が、いわゆる社会の裏の業界であるために、生死感がよく出た作品で、自殺屋という職業は特に人の生死感について考えさせられるものだと思う。そして死そのものが割りと淡白に描かれているあたりから、この作品の大事な部分を感じることができるのかもしれない。
それから、この人の作品の読了時間、ページ数の割には長い気がする。気付けば、ほとんど飛ばし読みをしていないのだ。つまりそれだけ、ひとつひとつの文章が過不足なく丁寧に書かれており、そして一文一文に重みがあるということだろうか。なんとはなしに心に残る言葉、文が多いのもきっとそのせいだろう。