ウィザーズ・ブレイン5/三枝零一

ウィザーズ・ブレイン〈5〉賢人の庭〈下〉 (電撃文庫)

ウィザーズ・ブレイン〈5〉賢人の庭〈下〉 (電撃文庫)

 満開の桜の花びらの舞う中で、すれ違うサクラとイル、二人の口絵がとても印象的。互いに守りたいもの、譲れないものがあり、どちらが正しいでもなくて戦い合う二人。それがひとつ。
 そしてもうひとつ。魔法士として大勢の人間を殺してきたサクラ。過去に多数の仲間を敵を殺めたイル。人を殺めるのに仕方ないものなどない。背負って生きていくということ、それは決して正しい道ではないこと。
 その、ふたつ。この巻に感じたテーマ。序盤ではイルの言葉が針のように突き刺さり、終盤ではサクラの成長ぶりがどこか嬉しい。
 しかしこれだけの壮絶な戦いと悲劇においても、しかし役者が揃っただけにすぎなかった。終焉の始まり。ここから始まる、まだ見ぬ長く切ない戦い。あらゆる意味で非常に素晴らしい作品だと感じた。