空の境界/奈須きのこ

空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

いやはや、折角面白くなってきた、と思ったのだが。
また来たか。長々とわけの分からん説教じみてエラそうに悟ったフリして弁垂れるヤツらが。
突っ込みどころはもはや多すぎるのだけど、かといって構成の方は面白いかといえば、これが実にオーソドクス。
主人公たちが敵に出会うとまず、相手が長台詞を始める。この間、こちらは大した突っ込みもいれず、相手の言うことに関して決定的に否定したりしないので、いかにも敵の言っていることが正しい、または優位な意見であるように思わせる。読んでいる方としては、なんでそこに突っ込まないんだよ!ってな部分が盛り沢山なわけなんだけど、残念ながら敵は主人公たちが反論してこないのをいいことに、勝手に自己満足。
そして戦闘やらなんやらが始まって、最終的に主人公たちが勝つと、そこでようやく敵が言っていたことなんかに「それは違う」なんて言う。なら先に言っとけってツッコむわけだ。
結局は力で勝った方が正しいという安直な現実を皮肉っているのか?よく分からないけど、そういうのはお腹いっぱいなので、面白くも珍しくもないわけで。
まあ、なんと言っても長台詞ばっかりで見せ所が少なかったのが一番残念。
終わり方はなかなかよかったけどね。


それよりも、内容とは関係ないけど気になったのが笠井潔の解説。
上巻は伝奇小説についての云々をだらだらと書いていたので流したが、後半は多少は内容部分に触れられているので。血だのなんだのの伝奇に結び付けているのはかなり無理矢理だと思うし、境界性とかも強引に思える。そもそも一般論についてのことなんて高校生の頃の著者が深く考えて書いてるとは思えない。超越者云々はまあそうかもしれないが。
それに、この作品を論じるのにオタク文化を取り上げること自体はいいと思うのだが、式が萌え要素をちりばめているとか鮮花の学校の制服がメイド服っぽいとかどうやったらそんな発想が出てくるのか教えて欲しいくらい。
セカイ系を出すのはまあ微妙なところだがあれらの作品を挙げるほどではないのは確か。それから、時代の変遷もいらない。あまり関係ないし。どうもページ数稼ぎで余分なことを沢山書いているように見えて仕方がないのだがどうだろうか。


内容は面白くないことはないが、世評も合わせてやたら気に食わない部分の多い作品だった。