デルフィニア戦記 第1部 放浪の戦士1/茅田砂胡

放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

やば、面白いしハマっていく。ってのが第一感想。月並みだけど本気でそう思えた。
面白いというのを除いても、何よりも読みやすいというのがすごく意外だった。
戦記ものというと横文字の並ぶ地名人名がずらずらと出てきて、世界観に馴染み固有名詞を覚えるまでに時間がかかったりして読みにくかったり、もしくは重厚な雰囲気から読み進めにくいというイメージがあった。
しかし、そのいづれもこの作品には当てはまらず、すらすらと読めてライトノベルという感じがした。
そして、内容の面白さは言うまでもないが、特にキャラのよさというものが際立っていると思った。これはもう茅田キャラって言っていいんじゃないかってくらいこの人の作品の登場人物が同じような特徴を持っていると思う。レディガンナーではキャサリン、桐原家では豊かなんかがその筆頭だろう。そして今作ではリィが。
己の中に正義を持って、権力や理不尽に屈せず、固定観念にとらわれず邪魔な常識ならば捨て去り、希望でも悲観でもなく常に現実を見つめる行動力のある主人公。
そんな主人公が体制や権力に義を持って立ち向かい、固定観念を嘲笑うかのように打ち破っていくのは読んでいて爽快。
解説では「リィが存在しなくても面白いが、存在することで傑作となっている」のようなことが書かれていたけれど、リィがいなければ「面白い戦記もの」にはなっても「茅田作品のデルフィニア戦記」からは程遠いものだと思う。それだけ重要ってか根幹、もしくは魅力という気がする。
さらに、さあこれから始まるぞっていいとこで終わってるのがおいしい。これは続きを一刻も早く読みたくなってしまう。