冷静と情熱のあいだ/江國香織

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

 てっきり情熱的な恋物語だとばかり思っていた赤の物語。しかし意外と穏やかでゆったりした序盤、少し肩透かしをくらった印象は否めない。
 冷静の中の僅かな情熱、それが物語の進行に伴って肥大していく、その緩やかさに少しばかり退屈を感じる。
 その上、相変わらず感情移入に苦しむ主人公。愛して、傷付き、奥手になる。理解はできるが共感はできないタイプ。かといっていざ情熱的になってきた女性はこうも身勝手かと思えるような自己中心っぷり。
 彼女もまた、冷静と情熱の使い分けを誤っているような、そんな気がする。
 しかし、どうもこの手の物語では主人公よりも周りの登場人物に共感しやすいようで、それがもったいなく思えて仕方がない。