冷静と情熱のあいだ/辻仁成

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

 やはり男性の描く恋愛小説は自分には合わないようだ。
 忘れられない女性がいて、愛してくれる女性がいる。やがてどちらかを選ばなければならない時が来るのに……。自分を愛してくれる人に、面倒くさいと思いつつ甘える主人公。心此処にあらずで彼女を抱く主人公は、それを嫌に思いつつ現状を変えようとはしない。人生は後悔の連続だとか言いながら、後悔をしない努力が全く見られない。そんな主人公に苛立ちを覚えまくりで、そりゃ楽しめるはずもなし。
 結局は、冷静と情熱の使い分けを間違えたのだろう。そのせいで、彼は憎む父と同じようなことをしてしまったのだ。
 まあ、その辺の心理描写がやたらリアルに伝わってくるあたりは流石かと思う。