ぶらんでぃっしゅ?/清涼院流水

ぶらんでぃっしゅ?

ぶらんでぃっしゅ?

 まあ、一言で言うと圧巻。いろんな意味で。
 この作品では流水御大の好きなコトバ遊びにこだわりまくっているわけだけど、こじつけかダジャレ以外の何物でもないそのコトバ遊びを楽しめたなら、この作品は超ド級最高傑作と成り得るだろう。
 よく言われる流水大説の特徴、「しつこいくらいの過剰描写と繰り返し」が、今回はなんと、8割引!!(当社比)。相変わらずどうでもいいところに細かいけれど、今までの流水大説に比べれば断然少ない。それでもって「文ショウ」も絶好調。なに?この絶好調ぶりは。
 物語としては、人生記みたいな。生まれる前から大人になるまで、超ボリュームで波瀾万丈。主人公の神視点一人称という特殊な技法で描かれたことにもインパクトがある。何度も訪れる一人称の直感。白熱していくぶらんでぃっしゅ。オチで投げたくなることもなく、尋常によかった。
 御大は間違いなく「現時点での最高傑作」と言うだろうが、自分もそう思う。父親になって決意新たになったのかな?


以下ネタバレ(ネタバレしてから読むと面白さ4分の3減です)






コトバ遊びトーナメントは、トップランのゲームのときほど盛り上がらなかった。あそこをハズしたのは痛い。盛り上げるならばもっとコメントを増やすべきだったかもしれない。
 逆に「この人と遭うのは、これで最後だ」はすごくよかった。終盤に遭う人遭う人直感を抱くシーンは、流水大説ではありえないほどスピーディでエキサイティヴ。
 そして生まれてから死ぬまでの数十年を、流水大説クオリティで全て描く膨大なボリュームに感動。巨編といっても過言ではない気がする。
 流水大説だけあって、ツッコミどころは満載。フラッシュバックが事実ではなくて死ぬ間際の自分の記憶から想像された歴史ってのがまずおかしすぎ。しかしその辺も流水大説。哲学的とか文学的とかいって済みそうだなぁ。