私が彼を殺した

私が彼を殺した (講談社ノベルス)

　ミステリの感想を書くというのは、なるべくネタバレしてはいけないという点において、難しい。特にこのような、犯人を推理するような作品においては、犯人を特定できるヒントなんかを易々と書けないことだし。
　それはさておき、個人的にはミステリはあまり好みではない。どちらかというと苦手なジャンル。これは、考えながら読むってのが嫌いだからなのだけど、残念ながら最初に東野さんが言っているように、ミステリ好きの読み方ってメモとか取りながら読むとかそういうのらしい。個人的には、これは小説として、物語としてどうなのだろうかと思うのだけど、まあ人それぞれってことで。
　しかしミステリ嫌いと言っておきながら、その嫌いなミステリの典型的な型ともいえそうなこの作品はなかなかに面白かった。なぜかを考えてみると、やはりこの作家東野圭吾、展開運びがなんとも上手いのだと思う。緩急の付け方はもちろんのこと、文章を見ても某御大みたいに説明過多になっていたりしない。
　ただ残念な点があるとすれば、登場人物の振る舞い。この作品の被疑者ほど頭のいい人たちならば、刑事が質問したことに関して「関係ないでしょ！」見たいなことを言えば疑われるのは容易に分かるはず。なのにみんな怒ってばかりってところ。
　それから「整理」という言葉。整理してみましょう、なんてまどろっこしい説明過多と一緒だし。整理したい人は勝手にやるでしょう、自分で。
　終わり方はアレでいいのか！？って気はした。もう、すこぶるね。犯人多分あの人だからええんだけど、明確に示さないっつーのはどうかと思う。いや、それはそれで面白いけど。