ブックオフと出版業界/小田光雄

ブックオフと出版業界―ブックオフ・ビジネスの実像

ブックオフと出版業界―ブックオフ・ビジネスの実像

 この本の感想をまともに書くと、ちょっとやそっとの量じゃすまない気がするので、軽く感想と紹介を。
 まず言えるのは、この本は出版業界者によって書かれたもので、出版界から見てのブックオフを代表とする、新古本屋についての見解、もしくは危惧が如実に現れている。それと共に、読者ではなく消費者をターゲットにした、拝金主義的なブックオフの政策を、嫌悪感をあらわにして批判している。さらには、坂本社長がいかに出版業界に対して無知であるか、それを「ブックオフ革命」という宣伝本を例にとって、半ば嘲っている。
 内容の方は、まず第1章として、著者の前作「出版社と書店はいかにして消えていくか」から続くように、再販制と委託制度による従来の出版業界の在り方の危機について、データを元にして分かりやすく述べられている。そもそもデータ自体が現在からすると古いものであるが、相次ぐ出版社の倒産などを取り上げることによって、より危機感を感じられるようになっている。
 第2章としては、そのような出版不況という時代背景からの、ブックオフのような新古本屋チェーンの登場についてである。ここでは、フランチャイズなどの新たな政策としての、ブックオフの台頭が述べられている。
 第3章になってくると、ブックオフが出版業界および書店にとって、無視できなくなってきた辺り。その時の出版社のブックオフのシステムに対する見解などが議論されている。そして、この時点では「特に問題なし」という予想が、後々に外れることとなる。
 第4章は最初にも述べたとおり、ブックオフ坂本社長の発言の矛盾や、政策に対する批判。もしくは、その経営のハッタリに対する批判などが述べられているが、この部分が本書の一番述べたかったところだろうなと思う。揚げ足取り放題で、なんか書いてる方も、めちゃくちゃ本音出しまくり。その多くは、ブックオフフランチャイズ加盟店の経営不振に向けられているってのが面白いことだけど。
 全体を通して、出版業界の歴史や内情のさわり、データなどが多く書かれているので、出版業界の勉強の導入本くらいには丁度いいと思う。ブックオフのことについても、歴史やそのシステム(の穴)、経営についての実情などについてはけっこう参考になる。ブックオフフランチャイズ加盟を考えている人なんかが読むと「ちょっと待て」となるかもしれないし。
 しかし、やはりというか批判本であることがこの本の良さを殺しているなぁと。この作品でよく挙がる「ブックオフ革命」という本は、逆に宣伝本であるらしいが、二つ足して2で割ったら丁度いいんじゃないだろうか。できれば、消費者側の視点からのブックオフ本を読んでみたいとも思った。