星の王子さま/サンテグジュベリ

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

 永遠の名作とある通り、かなり昔の作品が新装されたものらしい。有名な本だったのだろうが、残念ながら全く知らなかった。しかし、読んでみるとなんとなく、そう言われている理由が理解できた気がする。
 子供向けの絵本のような内容でありながら、大人が読むと軽く哲学じみた印象を受ける。それほど深く語らず、しかし敢えて考えさせるように、はっきりとさせない文章。文学作品ってこういうやつだろなと思う。
 内容は、数歩で回れるような小さな星に住んでいる王子の話。この時点で科学なんか捨てちまってるぜって感じだけど、それをつっこむようなヤツは空想科学読本でも読んでろって話。素敵なおとぎ話に無粋なつっこみは不要。文学的というかブンガク的。
 その後、自分の星で一輪の花に別れを告げ、数々の星を巡った王子はそこで色々な価値観の人々と出会う。なんかキノの旅のような感じかな。違うのは、冷めてるかそうでないかってこと。王子は出会う人々から色んな考えを得て、自分の生き方を決めていく。いわゆる成長物語かな。
 そして、地球に来たときに一匹のキツネに会って、そこからもいろいろなことを学ぶ。飼い馴らすことが絆を作ること。キツネは絆の重要性を繰り返したが、それはこの作品にとっても重要な部分の一つだろう。そのキツネは彼にとってただのキツネではないし、王子にとっては、彼の星に咲く一輪の花は地球上のどの花とも比べ物にならないくらいの価値を、持っている。「大事なことは目で見えない」、つまりはそういうことなのだろう。
 やがて彼は「ぼく」と出会い、そして「ぼく」に影響を与えてゆく。彼と「ぼく」の絆、そして別れはやけにあっさりと書かれている気もするが、その辺も肝なのかもしれない。
 解説にもあったように「この本は要約できない」「一読しただけでは分からない」、ということ。かなり共感。エンタテインメント性が少なく、一読しかしていない上に文学的だったため、この程度の評価となったが、自分のようなラノベ読みじゃなくて文学好きとかの人なら、すごく好きかもしれないと思う。